自転車を漕ぎながら、戦隊モノの(ような)歌を非常にソウルフルに熱唱している少年がいた。割に小太りの少年だった。
彼は周囲を意に介することなく、非常に荒々しい走行でこちらへと曲がり角を突っ切ってくる。「うわ!アブねぇ!」と、私も思わずイラッとさせられる。が、彼はそのままに、ただ魂のままに、楽しそうによくわからない歌を歌いながら走り去ってしまった。その瞬間的なインパクトに驚くと共に、私は何故だか笑いがこみ上げた。危険なドリフト走行も、「破天荒な毎日を暮らしてます」みたいなロックシンガーよろしく、ある種のファンキーさを音楽に与えているようであり、まぁ良い。
道端で、一人で、妙な歌を歌いながら走り去っていった彼は、何がそんなに楽しかったのか?私も自分の世界に素直にのめり込めるような、そんな純粋な気持ちを取り戻してみたい。

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その後日。
私が「ディングディンドンディングディンディンドン♪」と鼻歌交じりに裏庭へ出ると、「ガサッ」。「ハッ!」。隣家の住人も同じく庭仕事に勤しんでいたようだ。お互い目を合わせることもなく、黙々と作業をし続ける。「私もここにいますよ、聞こえていますよ、気をつけて」と無言のアッピールをされてしまったように感じた。恥ずかしかった。「陽気だね」と笑って欲しかった。
ああ、私も十分素直で純粋に小さな事を楽しんでいるじゃないか。あの少年のように。そんな日曜の朝のこと。